話術を身に付けたい

ある担任に「今年度、担任としてどんな力を身に付けたい?」と聞いたところ、「学級の生徒に向かって話すとき、生徒たちが納得できるような話術を学んで上達させたい」という答えが返ってきました。

「漠然とだけど、もう少し生徒を自分の話に引き付けたい。イメージだけど、生徒がもっと頷くような話をしたい。」と言います。

担任として、とてもいい目標を持っていますね。

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現状把握をしてみた。

学級で彼が話している所を覗いてみました。彼が不満をもっているほど悪くはありません。むしろ論理的で余分な言葉がなく、分かりやすい感じです。ゆったりしていて、生徒も安心して聞いているように見えます。

翌日も覗いてみました。やはり同じ感想です。生徒もよく聞いています。しかし、確かに生徒は聞いているだけで、表情や動作が乏しいのが気になりました。

翌々日も覗いてみました。多分これかな、と思えるところを見つけました。

正しいことを論理的に分かりやすく伝えているだけになっていたんです。

正しいことを言い続けるのは、とてもよいこと。

正しい言葉を生徒に浴びせることは、よいことです。

僕たちは”言霊”などと言い、言葉の力をよく知っています。よい言葉を使っていく方が結果が良くなることは、周知の事実であると思っています。脳科学的なのか、心理学的な分からないが、すでに証明されていることとして扱います。

少し余談ですが、こんなエピソードを思い出しました。

元NBA選手のレジー・ミラーがインタビューで、ヘッドコーチであるラリー・ブラウンの指導に対して質問を受けていました。「ヘッドコーチと激しく口論していたように見えたが、信頼関係はあるのか?」

すると、「ラリーの言い方や態度は腹が立つ時がある。素直には受け入れられない時がある。彼の口癖は”正しくプレーしろ”だ。その時は口論になるが、その言葉は確実に選手たちの頭に残る。腹が立っていても”正しくプレーする”ことを考え、実行しようとしてしまう。やはり彼は偉大なヘッドコーチだよ。」と答えていました。

言葉は残るのです。担任の言葉は、正しいことも間違ったことも、それは生徒に残っていくものなのです。

目指すところが分かってきた

先ほどの担任は、正しいことを論理的に分かりやすく生徒に伝えています。何度も言いますが、悪いことではありません。

しかし、”伝えること”が目的であればの話です。彼の目的がそうでないから、話術を磨きたいのだ、というのが分かってきました。

彼は、自分の話を生徒が聞いて、”納得する”ということを目指しているのです。具体的には、担任の話を聞いた生徒が「なるほどね。そうだよね。じゃあ、がんばろうかな」と納得して頷いたり、モチベーションが上がって笑顔になったりする姿をつくりたいということなのです。

話し方に少しエッセンスを加える①

「伝える」ことを「納得する」にするためには、話し方に少しだけエッセンスを加えていくことをお勧めします。

1つ目のエッセンスは、生徒の感情を言ってあげることです。

「面白そうだと感じる人がいたり、面倒だなと感じる人がいるよね。自分の時間を取られちゃうし、楽しくおしゃべりしたい人もいるだろうしね。でもさ、よく考えてみてね。これはさ・・・」

「この件についてどう思う?」と生徒に聞き、「やって意味あるのかなあって思う。失敗するかも知れないし。」と返ってくるとします。そうしたら「そうだよな、分かるよ。意味ないとか、失敗するかもって思っちゃうよな。でもさ・・・」

ある時、鋭い生徒が僕に「先生ってさ、話の入りがいつも一緒だよね。こう思う人もいるし、こう思う人もいるよなってさ。よく考えたら、あればずるいよ。全員が土俵にのっちゃうもん」と言ってきました。

生徒の感情を言うことは、生徒と先生が同じ土俵、同じスタートラインに立って、話のスタートができるんだと教えてもらった瞬間でした。

※学級の生徒全員を同じ土俵にのせるために、僕はよくこんなことを考えていました。この話をすると、一番ヤンチャな○○君はこんな思いになるかな、一番ひねくれた考えをする△△君はこんな思いかな、何でも反論したがる◇◇君はこう思うだろう、と。

エッセンス②

担任自身が納得しているだけではなく、生徒たちも納得することを目指します。逆のことを言えば、担任が納得し生徒が納得できない、もしくは担任は納得していないのに生徒が納得していないという状況をつくらないと言うことです。

要するに、ある話題に対し、全員が納得することを目指しているのです。

そうするために「担任を生徒と同じレベルにしてしまえ」ということです。そうすれば、納得感に対し、立場が関係なくなります。

それを目指すとどうなるか?語尾が変わります。こんな感じです。

担任が上からものを言うと「○○しなさい。○○するべきです。○○しなきゃだめ。」

担任が下からものを言うと「○○して下さい。○○した方がいいと思います。○○してほしいのでお願いします。」

担任と生徒が同じレベルでものを言うと「○○だよね。○○するべきだと思うけど、どう?○○しような。○○した方がいいよな。」

実力アップのために

他の先生たちの生徒に対する話し方を批判的に観察してみましょう。

生徒が納得する話術をもった先生は、生徒の感情を理解し表現しているだろうし、同じレベルで、同じ仲間になっているような表現をしていることが分かるでしょう。

使いやすい言葉だが、これが「生徒の心をつかむ」とか、「生徒の目線に立って」の例なのです。

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