スポーツをやっていると、体幹や重心、軸という言葉をよく耳にします。バスケットボールのシュートは足を使って打つ、ピッチャーは下半身が大切なども聞いたことがあります。
専門的なことは分からないが、これらの思考はとても理にかなっています。
生徒の言動も同じです。学級で生徒が何をどのように話すか?どんな行動をとるか?すべては生徒の心の動きからくるものです。
スポーツで、体幹や重心、軸を意識して鍛えるように、学級では生徒の心の動きを意識して鍛えていくべきでしょう。
どこに意識をもっていくか?
生徒の言動に意識が向くのは当然です。生徒の言動次第で成長したり、停滞したりします。担任ならば、他学級と合同で行う活動は迷惑かけるわけにいかないと思うものです。
だからと言って、言動そのものをコントロールしようと無理をしてはいけません。
例えば、「全校集会で顔を上げて発言者の目を見て聞いてほしい」という担任の願いがあるとします。担任は、そのまま「今日は顔を上げて発言者の目を見て聞こう」と生徒に言う。
これは生徒の言動だけをコントロールしようとしていると言えます。生徒がどれだけ先生の言うことを聞こうとしているかが試されるようなものとも言えます。
だから持続しないし、担任は言い続けなければならなくなるのです。
生徒の言動に変化をもたらせたいのであれば、担任は、元となる生徒の心の動きを意識するべきなんです。
元となる心を動かすとは。
上記の例で言えば、担任は集会の目的や内容を理解したうえで「今日の集会はどんな目的で行われるか知ってる?」と話題をふってみます。
フリートークの中で、生徒が目的と内容を把握したら「だから、今日の○○さんの話は君たちにも僕にも興味深い話になると思うんだよね」…。
どのような方向にトークが進むか分からないが、生徒たちが○○さんの話に興味をもてるように、ワクワクするように、もしくは聞いておかなければ損するかも知れないと思えるようにしていきます。
要するに、言動に意識を向けて、言動自体をコントロールしようとするのではありません。生徒の心に意識を向け、心をくすぐって、揺らして、動かすことで、言動に変化をもたらそうと言っているんです。
当然「顔を上げて、発言者の目を見て」聞いている生徒ばかりではなくなります。メモを取りながら聞く生徒が出てくるかも知れないし、「筆記用具持って行った方がいいかな」などと言うかも知れません。発言が理解できないときは、隣の生徒と目を合わせ「どういうこと?」という表情をしたり、思いを巡らせるときは上に視線をもっていったりします。
どんな聞き方が、自分の生徒の言動として素晴らしいと思うだろうか?ただビシッとしている学級が素晴らしいと思っていたら、その固定観念をリセットしてほしいのです。
※ 教員は、全校集会などは自分が企画運営の担当でないために、完全な受け身で参加する人が多いと思います。全校集会は、生徒にとって価値あるものだから学校活動に位置づいているのです。自分が担当する活動と同様に、生徒たちの学びを計画して臨みたいものです。
「声を出せ」の指導を考える
部活動で「声を出せ」と生徒に怒鳴っている顧問の先生がいます。
そんな先生に考えてほしいのが「良いチームは声が出ているのは事実かも知れないが、声が出ているチームは良いチームなのだろうか?」と。
甲子園の高校野球をテレビで観ていると、ベンチで夢中になって声を出している様子が映る。良いチームばかり、甲子園に出るくらいだから当然だなぁ、と感じます。彼らは、声を出すことを目的としていません。自分の言葉を仲間に伝え、気づきを与えたり、励ましたりするために、声を出しています。
仲間が打つために、守るために、声を出す。なぜならそれが勝利につながるから。要は勝ちたいのです。そのために自分のできることをやっているだけなのです。
顧問は、チームが勝利に向かう心をつくり、そのためにできることを思考させることから手をつけていくべきです。
まとめ
担任は、生徒の心に意識をもっていき、その心を動かす努力をするべきです。
そうすれば、生徒の言動は変わってきます。
生徒の言動にだけ意識を向けると、生徒は言われたことをやるだけの操り人形のようになります。
思いつくままに
- 部活動の顧問の先生は「なんで真剣にやらないんだ」「あきらめるな」「もっとがんばれ」と言う前に、生徒が「真剣にやりたい」「あきらめたくない」「もっとがんばりたい」と思えるような部活運営をしていきませんか。
- 元NBA選手のダニー・マニングは、無口で自分の役割を淡々とこなすプレイスタイルでした。試合後の記者会見でチームメイトのチャールズ・バークリーが「彼は、静かなチームリーダーであり、闘争心はチーム1だ」と語っていました。
- ある少年団の監督から相談がありました。「厳しく指導すると、ついてこないで辞めてしまう。やさしく指導すると、適当にやるし、上手くならない。どうしたらいいか分からない」と。「まずは、監督の思いではなく、子どもに意識を向けるべき。さらに子どもの心に意識を向けるべき。子どもが上手くなりたいと思える指導はどんな指導かを考えてください」この相談の後、この少年団は3年後に県優勝し、全国大会へ進んでいました。…この監督、柔軟すぎます。
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