行事が終わったとき、
「優勝できてよかった」
「自分の役割を果たせた」
「優勝できなかったけれど、みんなで協力できた」
「いい思い出になった」
こんな振り返りが出てきたことで、教師まで満足していないでしょうか。
もし、教師が本番を滞りなく進めること、出来栄えを高めること、子どもたちが活躍し、いい思いをすることばかりを考えているとしたら、行事を教育活動ではなく、イベントとして捉えすぎています。
もちろん、本番はよいものにしたい。
グダグダの本番でいいわけではありません。
教師も子どもと一緒に、「勝とう」「いい発表にしよう」「最高の行事にしよう」と本気で取り組みます。
しかし、それは教師の最終的な目的ではありません。
子どもと教師では、見ているゴールが違う
体育祭なら、子どもは1位を目指せばいい。
合唱なら、最高の歌を目指せばいい。
修学旅行なら、最高の思い出をつくりたいと思えばいい。
教師も一緒にそこを目指します。
ただ、教師には、そのさらに上位の目的があります。
この一連の活動を通して、子どもがどう成長することを目指し、教師はどう働きかけるか。
教師が考えるのはこちらです。
勝つことだけがゴールなら、勝てば成功。
発表の完成度がゴールなら、きれいに仕上がれば成功。
思い出づくりがゴールなら、みんなが楽しく帰ってくれば成功。
しかし、教師は行事を上手に運営するためだけのスタッフではありません。
教師は、子どもが成長するように働きかけ、その成長に責任をもつ専門職です。
だから、本番の結果だけでなく、行事の前と後で子どもがどう変わったのかまで見ます。
行事も、子どもが成長するための手段のひとつ
学校行事は規模が大きく、本番があります。
そのため、清掃や給食、話合い活動などの日常とは別の「特別なイベント」のように見えやすくなります。
しかし、子どもの成長という点では同じです。
仲間と関わる。
役割を担う。
自分で判断する。
失敗する。
葛藤する。
やり直す。
そうした経験を重ねる中で、子ども自身が変わっていきます。
学校行事は、日常よりも多くの人と関わり、大きな役割を担い、思いどおりにならないことにも出会う、経験の大きな機会です。
そこで教師が先に考えるのは、
行事が終わったとき、子どもにどんな姿が表れていてほしいのか。
ということです。
その姿から考えることで、どんな経験が必要なのか、どこを子どもに任せるのか、教師がどこで働きかけるのかも変わります。
例えば、リーダーを経験した子が、
「リーダーは、前に立って指示する人だけではない」
と気付く。
今まで見えていなかった仲間のよさに気付く。
自分の考えを押し通すのではなく、仲間の思いを聞いて判断するようになる。
そんな姿が表れることを目指して、教師は行事に向けた一連の活動へ働きかけていきます。
これは「結果より過程を見よう」という話でもありません。
結果として、子どもにどんな姿が表れてほしいのか。
そこから考えるからこそ、子どもにどんな経験が必要なのかが見えてきます。
その経験を子ども自身が歩んだ結果として、意味のある過程ができていきます。
準備から振り返りまでが、一連の行事
行事というと、どうしても本番の日に目が向きます。
しかし、学校行事は本番だけを指すものではありません。
何を目指すのかを考える。
準備する。
話し合う。
練習する。
うまくいかずに考え直す。
本番を迎える。
そして振り返る。
準備や計画から振り返りまで、その一連の活動が行事です。
だから、
「体育祭を振り返ろう」
ではなく、
「体育祭の取組を振り返ろう」
と考えます。
振り返るのは、勝敗や本番の出来栄えだけではありません。
一連の活動を通して、
自分たちは何を得たのか。どう変わったのか。
そこを振り返ります。
この捉え方は、学習指導要領解説とも重なります。
文部科学省は学校行事について、体験活動を充実させるとともに、体験を通して気付いたことなどを振り返る事後の活動を充実させること、さらに事前・事後の指導まで含めて行事を計画することを示しています。
また、Kolbの経験学習論でも、経験そのものだけで学習が完結するのではなく、経験を振り返り、そこから意味を見いだし、次の経験へつなげていく循環として学習が捉えられています。
担任にとって、行事の成功とは何だろう
本番を滞りなく進める。
盛り上げる。
勝つ。
よい発表をする。
思い出に残る一日にする。
教師も、子どもたちと一緒にそこを目指します。
しかし、それだけで行事を終えたら、教師の仕事は本番の運営で終わってしまいます。
教師が責任をもつのは、その先です。
その行事を経験する前と後で、
子どもはどう成長したのか。
準備から振り返りまでの一連の活動を通して、子どもがどう変わったのか。
そこまでを教師の仕事の成果として捉える。
それが、担任にとっての「行事の成功」です。
次の行事を計画するとき、本番の日だけを見るのではなく、
「この行事が終わったとき、子どもにどんな姿が表れていてほしいか」
から考えてみる。
そこから見える学校行事は、これまでとは少し違ったものになるはずです。

参考文献
文部科学省(2017)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編』
Kolb, D. A.(1984)Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development. Prentice-Hall.
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