
新年になり、学活で『個人目標づくり』をしたところ、生徒に「目標また書くの?」と言われてしまいました。
効果的な『個人目標づくり』って、どうすればいいんだろう?
こんな疑問を解決します。
- 「目標また書くの?」に隠された本音
- 先生が『個人目標づくり』をさせる間違った理由
- 効果的な『個人目標づくり』の実施方法と適切な回数
- 個人目標を使って生徒を育成する方法、生徒評価する方法
- 適切な『個人目標づくり』を仕掛け、教育効果をあげよう
これ、本当に大切な活動です。実力ある先生は、考え抜いて仕掛けている活動です。
逆に、そう感じていない先生は、生徒から信頼をもらえるチャンスを逸していると言うべきか、不信感になりかねないと言うべき活動の1つです。
とは言え、僕も初めの頃は、何も考えずに個人目標を書かせていた1人です。
でも、安心してください。
では、行きましょう!
「目標また書くの?」に隠された本音
「目標また書くの?」という発言の裏には、「先生たちは、僕ら生徒に何回もいろいろな立場で目標を書かせる。今目標立てなきゃいけないの?」という思いがあります。
当然、生徒たちも目標を立てる大切さは理解しています。
それにしても多いのです。身に覚えはありませんか?
- 新学年の目標
- 新学期の目標
- 新年の目標
- 各教科の目標
- 委員会の目標
- 部活動の目標
- 体育祭などの各行事の目標
それが生徒たちにとって効果的であり、その目標を意識しながら活動していたら、「また書くの?」などと思うことはありません。
少し強めな言葉を使いますが…
生徒の正直な声は教員にとって宝物です。
生徒から、「目標また書くの?」と言われたことを、瞬間的に悲しんで、伸びしろがあることを冷静に喜びましょう。
先生が『個人目標づくり』をさせる間違った理由
以前の僕も、こんな間違った理由で『個人目標づくり』をしていました。
心当たりありますか?
- スタートするためには目標が大切だから
- 始めの学活で何しようかな?そうだ目標を立てさせよう
- 背面掲示にすれば、みんなに宣言することになり、こだわって活動するんじゃないかな
- 目標の内容を漢字一文字にして、レタリングさせれば、楽しいし見栄えがいい
もう分かりますよね。
以前の僕は次のことを全く考えていませんでした。
- 目標を立てることが、生徒の成長にどう影響を与えるか?
- 目標にどんな内容を書いてほしいのか?
- 目標をどう活用して生徒の成長を促すか?
大丈夫です。考え方さえ分かれば、誰でも実践できます。
効果的な『個人目標づくり』の実施方法と適切な回数
学期に1回
学期に1回だけ、大きな目標を1つ立てる。
= 学期の最初に1時間だけ目標設定の時間を設ける。(それ以上は、やらない)
僕たち大人もそうですが、目標が多すぎると、あれもこれもとなり思い入れが薄くなってしまいます。
例えば、「1つだけ、このような目標を立てましょう」と生徒に問いかけてみましょう。
- 2学期に学級委員になる
- 部活動でレギュラーを獲る
- 学力を上げる
- クラスのみんなと良好な関係を築く
- 平和な毎日を過ごす
この大きな1つの目標に向けて、様々な場面をイメージしていけば、あれもこれもにならないのです。
長文で書く
A4プリント1枚程度に、目標設定の根拠と目標に向けた具体的な取組を作文させましょう。
1つの大きな目標は、その生徒にとって、その学期中に1番なりたい自分が描かれています。
ただ、その目標に向かって継続して努力を続けるには、それなりの動機づけと、具体的な取組(ストラテジー)が必要になります。
例えば、「どんな思いからその目標を立てたか、どんな生活(学校生活)を送ることで目標達成できるかを書いてみよう」と生徒に問いかけます。
今、私はバスケ部でベンチメンバーだ。1度しかない中学校部活だから、絶対にレギュラーになって活躍したいと思っている。……だから、日常生活から見直していこうと思う。まずは練習で全力を尽くせるように、睡眠時間をしっかりととって健康に気をつける。夜更かしをせず、スマホを布団に持ち込まない。学校生活では、他の人のことを考えて行動しようと思う。ワガママなプレーをしていてはレギュラーが遠いからだ。委員会活動では……
このように、作文を強いることで、動機づけと具体的な取組を明確にすることが出来ます。
インタビューで補う
作文が苦手な生徒は、インタビューをしましょう。
中には、自分の思いがまとまらなかったり、ふわっとしていたり、作文が苦手だったりしますよね。
そんな生徒には、時間を見つけてインタビュー(面談、雑談)することで、その生徒の思いを整理してあげましょう。
具体的には、次のことを生徒から引き出すイメージです。
少なくとも、先生がしっかり理解していることが大切になります。その理由は次の項目で解説します。
個人目標を使って生徒を育成する方法、生徒評価する方法
目標を生徒と共有する
生徒の作文にマーカーで色分けしよう。
生徒の思いが分からずに指導すると、生徒指導が上手く入らない経験がありませんか?
生徒の思いと先生の思いが平行線であったり、全く違う方向を指しているからです。
そこで、次のように色分けして、シンプルに理解していきます。
今、私はバスケ部でベンチメンバーだ。1度しかない中学校部活だから、絶対にレギュラーになって活躍したいと思っている。……だから、日常生活から見直していこうと思う。まずは練習で全力を尽くせるように、睡眠時間をしっかりととって健康に気をつける。夜更かしをせず、スマホを布団に持ち込まない。学校生活では、他の人のことを考えて行動しようと思う。ワガママなプレーをしていてはレギュラーが遠いからだ。委員会活動では……
動機(オレンジ) ⇒ 目標(緑) ⇒ 取組(青)
先生として、これで生徒の思い(やりたいこと)が分かります。
見届け、励まし、つなぐ
この目標設定に沿って「生徒をよく見る」「生徒に寄り添う」
先輩の先生から「生徒をよく見なさい」「生徒に寄り添いなさい」と、よく言われました。
ただ、物理的に見たり、寄り添ったりしたら、スターカーやセクハラになってしまいます。
具体的には、次のように「見て」「寄り添い」ます。
- 日記のコメントに、「最近の生活はどう?スマホ依存してない?睡眠時間は確保できているの?」と書いて、学期の初めの気持ちを想起させる手助けをする。
- 「今日の帰りの会の○○さんの意見は、他の人のことをよく考えたものだったね」と学級委員に話しておく。⇒いろいろなタイミングで本人に伝わっていきます。
- 委員会顧問の先生に、「○○さんの取組はどうですか?こんなことを毎日頑張っていたら、教えてくださいね」と伝えておく。⇒顧問の先生が○○さんを見るようになり、褒めてくれる可能性あり。
- 整理整頓ができていないとしたら「レギュラーになる人物はこういう所にも気が回るものじゃないの?」と、伸びしろを指摘する。
これができたら、生徒からの信頼は上がります。
「先生は自分を見てくれている」「先生は自分のことを分かってくれている」と。
身に付けた力を評価する
生活所見や面談で、目標に対する成果を本人と保護者に伝えましょう
学年主任や先輩から、通知票の生活所見、保護者面談などで、頑張ったことや課題を伝えるように言われます。
ただ、その時になって「この生徒は何を頑張ったんだろう」「こんな課題があると思うけど、本人がそう思っていなかったら、スベるよなぁ」と、考えることがありますよね。
それでは、頑張りも課題もモヤっとしてしまい、芯を捉えることは書けないし言えません。
「バスケ部のレギュラーになる」という目標に向けて、自分の生活や学級での言動を見直したり、日々の委員会活動を継続してきました。学級では、みんなのことを考えた発言が増え、級友から特に学級委員から厚い信頼を得ました。学習面で言うと、テスト週間にまとまった学習をして、睡眠時間を削り、体調を崩すことがあったようです。次学期では、テスト週間に負担がかからないように、授業や日常の学習の質を向上させることで、目標に近づくことができるでしょう。
その後、本人に「どう思う?」と聞いたり、学級一斉に『個人の振り返り』の時間をとることも有効です。
適切な『個人目標づくり』の授業を仕掛け、教育効果をあげよう
適切な取組であるかどうかは、それが有効に機能しているかどうかにかかっています。
目標を立てることを目的にしてはいけません。
まして、見栄えのよい掲示物をつくるために書かせてはいけません。(掲示することを伝えると、恥ずかしさが出て、本心を隠すものです)
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