
今日、生徒の問題行動を注意したけど、何か違和感があったの。
そうしたら、保護者からお怒りの電話が…。
彼のやったことは、悪いのは間違いないのになぁ。



そんな悩みをよく耳にします。
生徒を叱れば叱るだけ離れていく感じがする。
叱り方が悪ければ、すぐ保護者からクレームがくる。



もしかしたら、
問題行動をした生徒へのアプローチが悪いのかも知れませんよ。
- 生徒の成長や保護者の理解は得られないロボット教育(ロボットのような対応)とは何かがわかる
- 生徒の成長を促す、問題行動への対応の考え方がわかる
- オールマイティで、どんな指導でも使えるフレーズのいくつかが分かる
問題行動に対応して、生徒の心が離れていったり、保護者から苦情がきていては、先生の心がもちません。
しかし、コミュニケーション力を駆使して、生徒や保護者が納得するような対応ができるのがプロの教師とも言えます。
プロのアプローチを学ぶ
生徒が自身の問題行動を見つめ、反省し、責任を取ろうとし、今後の言動を考えていく。そして、保護者に連絡を取ると「指導ありがとうございます。家でも話してみます」と理解と協力を得る。
そんなことができるプロの教師になりましょう。
叱ることは誰でもできる
例を挙げながら考えていきましょう。
担任のあなたの生徒の1人、Aさんが、Bさんに意地悪をしました。Bさんは翌日学校を休むくらい悩んでしまいました。周りの生徒に聞いたら、確かにAさんは意地悪をしていて、Bさんは辛そうだったとのこと。その時、あなたはAさんに対して、どんな指導をしますか?
Bさんが苦痛を感じているので、Bさんのケアが先です。Bさんから事情を聞いて、保護者とも連携をとったという前提で、今回はAさんへの対応を重点的に考えていきましょう。
- Aさんに事実確認する。
- Bさんが言っていることと、Aさんが言っていることが同じであるかを確認する。
最初はこんな手順でしょうか?
そして、Aさんが認めた場合、
- 「どうしてそんなことをしたんだ?」「そんなことをしてはいけないよね。」「Bさんに対してどうするんだ?」と言っていくのでしょう。
Aさんが認めなかった場合、
- 周囲の情報を集めて、「周りの生徒が見ていたよ。こう言ってるんだけど…」と事実を認めるように促していくのでしょう。



これのどこが悪いんだろう…



決して悪くありません。
通常の対応です。ただ、ロボット的で教師でなくてもできることです。
こうやって事実を認め、叱ったとしても、生徒はモヤモヤしてしまうんです。怒られただけ、怒られるの面倒だ、謝ればいいんでしょ、こういうのバレないようにしなきゃ、と思うかも知れません。
事実を認めなければ、もっと大変。「先生は僕を疑っている。冤罪だ」なんて騒ぐかも知れません。認めない限り、Bさんの心の安定からは遠ざかってしまいます。
プロの問題行動に対するアプローチ
上記の例でいくならば、Aさんが認めた、認めないに関わらず、次のような質問をしていきましょう。
- 「あなたの言動でBさんは悩んでいるって言ってるけど、どう思うの?」
- 意地悪の事実を認めなければ「意地悪をしたかどうかは本質じゃない、あなたの言動についてどう思うか聞いてるんだよ。」



何が違うの?
意地悪を認めさせなきゃいけないのでは…



そう。結果的に認めさせなければならない。
しかし、アプローチ(根底にある考え方)が違うんだ。
Aさんに対応する時は「Aさんのために話している」「Aさんが自分の言動を振り返ることは、生き方を振り返ること。そうすれば、いい生き方につながるんだよ」という思いを持つんです。
両者を比較すると
生徒の行動をおさえることを主軸に考えると、あなたの行動は悪い、謝るべきだ、言動を変えていくべきだという思いになる。結果的に反発心が生まれて、納得できなくなってしまう。
Aさんの成長を主軸に考えると、あなたの言動を振り返ることがあなたのいい人生につながるんだ、言動を変えることがみんなの信頼が大きくなっていくんだ、という思いになる。結果的に、先生は自分のために言ってくれている、叱っているわけじゃないとなる。



そんなに上手くいくものかなぁ



分かりました。
実際のエピソードを紹介しますね。
Aさんの心の中を想像しながら読んでください。
先ほどの例は、実例です。
Bさんが、Aさんの意地悪に悩んで学校を休みました。周りもAさんの意地悪の事実を担任に伝えました。
担任はAさんを呼び、「友達もAさんが意地悪したって言ってるぞ」と問い詰めました。
しかし、Aさんは事実を認めません。「俺は、そんなことしてない。冤罪だ。先生に呼び出されて名誉棄損だ」と教室で多くの友達に話していました。
放課後、Aさんの父親から電話がありました。「息子は、そんなことしていないって言っている。事実でないことを呼び出して怒るのはいかがなものか」
担任は「自分は事実がどうかを見ていません。だから判断するために事実確認をしているだけです」と言い返しますが、そこからは生産的な話にはならず、電話を切った後も困ってしまいました。
Aさんは、担任を不信に思い、Bさんは学校を休んだままになってしまいました。
ここに生徒指導主事が入ることになりました。Aさんを呼び、こういうのです。
「呼び出したのは、あなたのためです。あなたの言動がBさんを悩ませていることをよく考えてほしい。あなたが意地悪していないと思っても、Bさんは悩んでいる。あなたの言動がBさんを喜ばせるのではなく、悩ませている。そのことに向き合おうよ。」
「どういうことですか?」
「あなたには、あなたの出会った人、あなたと話した人が喜んでくれる、そんな人になってほしい。そんな人になれたら、あなた自身が幸せになるんじゃない。今、その逆だから、少し考え方や言動を変える必要があるんじゃないかって、思ってるんだよ。意地悪していないなら、何を意地悪だと思っているのか聞いてみる必要があるんじゃないか?」
「そうですね。聞いてみたいです」
放課後、Aさんが生徒指導主事のところに来て、「思い返したら、多分あのことが嫌だったのかも知れません。」
「じゃあ、どうする?Bさんに聞いてみる?それが嫌だったと言われたら、あなたはどうするの?Bさんに意地悪な気持ちもないんでしょ?」
「少しはあったかも知れません。謝ります。そして、学校に来たら相手の嫌なことはしません。」
家庭に連絡し、Bさんにそのことを話すと、翌日登校しました。そしてAさんが謝罪しました。



分かった!これならAさんは、
謝ることも反省することも自分のためのように思えるのね。
まとめ
担任からすると、被害生徒の立場に立って、加害生徒に対応しなければならない。早く収めなければならない。そんな意識が働きます。
だから、加害生徒に対応する時、問題行動をおさえる、事実を認めさせる、そのことに焦ってしまうのです。
ただ、加害生徒の考え方や言動が変わらなければ、同じことが起きます。
ゴールを冷静に見つめた場合、加害生徒の考え方や言動を少しずつ変えていくことで、被害生徒を守ることにつながるのです。
これこそ、ロボットにはできない、プロの教師ならではの技術ではないでしょうか。



教師が生徒を叱るとき、
それは、その生徒の幸せを願うからです。
それを生徒に感じさせることが大切なんです。

