
合唱コンクールで優勝したけど、隣のクラスの方が温かい雰囲気になっている気がする。
優勝した方がいいクラスになるものじゃないの?
どうやったら、隣のクラスみたいに温かい雰囲気になるんだろう?
こんな疑問を解決します。
- 競い合いの効果的な仕掛け方
- 競い合いを仕掛けるときのメリット
- 競い合いを仕掛けるときのデメリット
- 【具体例】競い合いを効果的に仕掛ける際のアプローチ
- まとめ:競い合いを仕掛ける際は、心の成長を軸にアプローチしよう
この記事では、学級における様々な『競い合い』をテーマに解説します。
というのも、すでに学級の活動の中には競い合いが組み込まれていて、競い合いから逃れることは難しいからです。そして、こんな考えを持っている担任が凄く多くいるのです。
- 絶対に自分の学級を優勝させてやる
- 勝負事は、負けちゃだめだ
- 学級が上手くいかないから、優勝することでいい雰囲気にしたい
はっきり言って、このような考え方だと学級経営にプラスに働きません。
実際、これらの考え方が決して悪いだけではないのですが、厳密に言うと、この考え方だけだと、せっかくの競い合いの効果は薄くなります。
でも、安心してください。
僕も、初めの頃は勝ちたい、勝たせたい一心で競い合いに参加していた1人です。
この記事を読んで、少しずつ実践していけば、誰でも効果的に競い合いを学級に仕掛ける(取り入れる)ことができるようになります。
後半には、効果的に競い合いを仕掛ける具体例も紹介していきます。
では、行きましょう!
競い合いの効果的な仕掛け方
結論から言います。
教員は、生徒と一緒に優勝を目指すが、それよりも生徒の心の成長を目指して、仕掛け、寄り添い、支援し、見届け、つなげていくべきです。
そう主張するわけは・・・
- 教育課程に競い合いを設ける目的が、生徒たちが優勝できる技術を身に付けることではないから
- 教員のやるべきことは、優勝させることではないから
- 主役は生徒であるから=先生は主役ではないから



職員会議などで、「目的はお読み取りください」で済まされるところが、実はとっても大事なんです。
読み返してみて下さいね。
そして、目的や考え方が分かれば、当然教員の発想や仕掛け方が変わってくるはずです。
こんな発想が出てくるようになります。
- 生徒の心が成長する瞬間があるはずだ!
- 生徒の心の成長を自覚できるようにしてあげたい
- 生徒の心の成長を次の活動に活かせるようにしてあげたい。
- 生徒の心が成長するために、担任は何をすればいいんだろう?
では、実際にどのようにアプローチしていけばいいのか?
競い合いを仕掛けるときのメリット
人のもつ競争心を利用できる
誰しも、競争心は少なからず持っています。
それを活かさない手はありません。
要するに、競い合いは、生徒が自然にモチベーションをもつことができるものなのです。
担任は、そのモチベーションを次のように仕掛け、最大限にしていくのです。
- 「人生で1回だけの〇年生の合唱コンクール」「この仲間で勝負できるのは、このコンクールだけ」という言葉を適度に使い、イベントに激レア感をプラスする。
- 勝った時に喜ぶイメージを想像できるように、話したり、画像を示したり、映像を用意したりする。
- 思いの強い生徒が、それを語る機会をつくる。(複数人、しかも活動期間で何回かつくる)



せっかくのモチベーション、最大限に活かすことで生徒の心の成長を加速させよう。
目標が明確であることを利用できる
集団の凝集力を妨げるものに、目標の不明瞭さがあります。向かうべき所が不明瞭であれば、当然生徒たちの心や行動はバラバラになります。
しかし、競い合いでは、目標が明確にしやすいという利点があります。
つまり優勝や勝ちです。それを生徒たちに強く植え付けましょう。
- 優勝などの文字、優勝をイメージした写真など、生徒と一緒に掲示物をつくる。
- 優勝に向いていない生徒には、優勝に強い思いをもつ生徒が関わりをもつように仕向ける。
- 「優勝するために」という目標のもと、学級で具体を話し合う。





目標がつくりやすい、と言うより、目標が既にあるのが競い合い。優勝以外の目標は、つくらなくてもOKですよ。
比較することで自分たちを見つめることができる
競い合いは、同じ目標に向かう相手がいます。スタートから、行事が終了後まで、簡単に比較することができます。
担任は、次のように視点を与えていきましょう。
- 活動初めの話し合いは、他の学級よりも真剣で、盛り上がっていたか。
- 計画が掲示されていて、他の学級よりも分かりやすいか。
- 活動は、他の学級よりも充実しているか。
- 中間の記録はどうか。
- 満足度はどうか。



あえて、本番での勝ち負けをリストに入れていません。生徒の心の成長を考えているからです。


競い合いを仕掛けるときのデメリット
相手(敵)がいることが前提である
デメリットの1つは、相手(敵)をつくってしまうことです。こんな場面に出会ったことがあると思います。
- 負けた時、相手の欠点やミスを探して文句を言う
- 競い合っている時、不公平なことを見つけて訴えている…「私たちの練習日は雨が多い」「あの学級は帰りの会が終わらないのに練習してる」
- 練習時間、練習日以外で秘密で練習している
- 勝った時、相手のことを下に見る



こんなデメリットに出会ったときには、見逃さず、すぐに対応する必要があります。
こんな時は、こう言いましょう。
「ねぇ、それおかしくないか?」と。
そして、その言動の根拠(理由)を聞きましょう。
生徒を叱ると、言動を抑制するだけになることがあります。言動を抑制しながらも、疑問を投げかけ、言動の下にある心の動きに迫ることで、生徒の心の成長につながります。
もう一つ。成長のチャンスとして捉えることも重要です。



これ、意外にも競い合いの時にだけできるメリットですね。
優勝を目指すとイベント化してしまう
優勝を目指すと、当日のみに意識が向いてしまいます。その結果、以下のような状態に陥っている姿を見ませんか?
- 優勝して、お祭り騒ぎ。その後も「俺たち凄いんだぜ」と優勝したことだけに満足している。
- 優勝できなくてガッカリ。担任や仲間の文句を言ったり、「つまんなかった」などとつぶやく。
- 翌日から、何もなかったかのように学校生活を送っている。
担任の先生のこんな姿も気になります。
- 賞状や写真をニコニコしながら掲示している。
- 帰りの会などで、生徒に話すことが見つからない。
- 無理やり見つけて、「次は定期テストに向けて、勉強頑張るように」などと語る。
- 「行事がないとまとまらない」と、無理やりイベントを企画しようとする。



こんな状況になったときには、以下の記事を参考にしてみてください。担任の行事に対する基本的な考え方が分かります。


相手がいると、相対的な結果になってしまう
相手がいることの喜びは、誰でも知っています。
しかし、相手がいることのデメリットも頭の中に入れておきましょう。
- 相手が強敵すぎると、あきらめの気持ちになってしまう。
- 相手が弱小すぎると、あまり努力しなくても勝ってしまう。校内の行事なので、上位大会などはない。
- 結果が、限られた相手との比較でしかない。
ちょうどいいライバル関係。努力を重ねると勝てる可能性が見えてくるくらいの相手に恵まれるときだけ、競い合いの行事が効果的になります。



でも、相手の力を選ぶことはできませんよね。また少子化により、学級数が少なくなっています。
考え方を変える時が来ているんです。
【具体例】競い合いを効果的に仕掛ける際のアプローチ
生徒の心の成長を期待して、教員は仕掛け、見届け、実感させるのです。
生徒の心情を予測しなければ、的外れな指導になってしまいがちです。
次の図は、生徒の心情の流れ、心の浮き沈みを表しています。


そして、担任として学級への仕掛けは大きく4回のみ。
矢印のところが、仕掛け時です。生徒の心を上昇させるキッカケをつくるイメージです。
それでは、どんな仕掛けか解説していきます。



学級の心情の曲線が底をつく直前に仕掛けます。
僕は勝手に「逆張り的な仕掛け」と考えています。
①先付け
行事の取組みを学級でスタートする時に、学活を打ち、そこで仕掛けます。
そこでは、次のことを生徒が考えて、やる気モードをオンにすることを考えます。
- どうしてこの取組をおこなうのか
- 取組の中で,大切にしていくのはどんなことか
- この行事や活動は,何のためにおこなうのか
流れは、次の通りです。
- 生徒が事前に、行事の取組みに対する思いを言語化(作文)する。
- 担任が目を通し、熱い思いが込めれれている作文をチェックする。
- 学活当日は、数名の生徒が作文を読むことからスタート。
- 上記の話題を話し合う。
- 学級委員や書記担当の生徒が掲示物として、活動中の拠り所をつくる。
注意すべきことは、目標決めにならないことだと思います。
目標決めとなると、言葉選び(言葉遊び)になってしまいがちです。
競い合いの目標は、『勝ち』『優勝』でいいのです。
あっていいのは『どんな勝ち』か、くらいまでにしましょう。焦点を当てるべきところは、言葉ではなく、心や気持ちです。
②中付け
生徒の気持ちは長続きしないものです。スタートの心の勢いは失速していきます。
担任は、その失速を観察します。同時に、「これではダメだ」「何とかしなきゃ」という心(気持ち)を持ち始める生徒が出てくるので、その心を捉えるのです。
活動の失速と「何とかしなきゃ」の心を見つけた時、学活を打ち、そこで仕掛けます。
- 担任は、学級委員などから情報を収集する。⇒失速の実態を確認する。
- 担任は、「何とかしなきゃ」と思っている生徒と話しておく。⇒どんな思いか把握しておく。
- 学級委員を司会に立てて学活スタート
- 「これではダメだ」「何とかしなきゃ」と思っている生徒に思いを語る場面をつくる。
- あとは、学級としてどうしていくか、話し合うだけ。
注意すべきことは、学活の結論(落し所)を求めることはしないということです。
時間制限の中で話し合う学活です。当然、その時間だけで結論まで行かないこともある。
(こっちの方が大切)さらに、結論を出したり、言葉にするよりも、心や気持ちが変わり、活動に変化が出てくるようになればいいのです。



結論を求めると「活動中は私語をしない」「時間に遅れずスタートする」など、ルール作りにシフトしてしまう危険もあるので、注意が必要です。
本番
生徒は、「勝ち」「優勝」を目指して頑張る。
担任は、「勝ち」「優勝」を目指して頑張りながらも、生徒の頑張りをよく観察する。
具体的には、こんなことを見つけたい。
- 熱い思いを語り続けた生徒は、どんな声掛けをしているだろうか。
- 一時期、活動の失速の原因となった生徒は、どんな関わりをしているだろうか。
- 何も言わず、ひた向きに努力していた生徒は、どんな表情を浮かべているか。 などなど。
ポイントは『競い合いの姿』ではなく、その前後の『関わり』『言葉』『表情』『行動』に注視すると言うことです。
競い合っている所を捉えていくと、きっと「必死に頑張ったね」とか「上手かったね」「抜かしたね」などだけになってしまいがちです。
そこに心や気持ちの表出を捉えることは難しいものです。
③活動の振り返りから
振り返りから、日常生活へつなげるために、丁寧に仕掛けていきます。
振り返りでは、活動を俯瞰して、少し長めに言語化(作文)するようにします。



学習の振り返りと同じように、少し長めの文章を強いることが有効です。少し長めにすると、生徒は根拠に触れたり、深掘りして書くようになります。
僕は、次のように個人で振り返る時間をつくります。
- 学活の前半は、活動のスタートから行事終了までのストーリーを生徒と振り返ります。
- 後半は、個人の振り返りの時間とする。
- 生徒に、「行事当日ではなく、スタートから行事終了までの自分に焦点を当てて振り返りを書こう」と伝える。
- A4片面にラインが入ったプリントに振り返りを書く。



気づきましたか、既に勝ち負けから離れています。
次に、担任が心の成長を見つけていきます。見つけるレベルは2つ。学級と個人です。
見つけ方は、どんな方法でも構いません。
学級の成長であれば、学活を打って、語り合う中で成長を捉えてもOK。学級委員や立場ある生徒と成長を捉えてもOKです。
個人の成長であれば、担任が作文を読んで、その生徒と、心の中を表出できるように話すなどは、有効な手段です。
④後付け
心の成長を言語化し、生徒と共有し、定着させる最終段階です。
ここでは、学級の成長を例に挙げます。手順は次の通り。
- 担任が、定着させたい『学級の成長』を言語化しておきます。例えば、『規律が大切だと気付いた』『仲間の思いに応えることの大切さに気付いた』『得意でない子の気持ちに寄り添うことができた』などなど。
- その『学級の成長』について、生徒に共感を求めます。(共感できなければ、他の『学級の成長』に変える必要があります)
- 学級掲示をつくり、いつでも見えるようにします。
- 僕なら、学級通信をつくって、生徒と保護者、先生方に文字で伝えておきます。
- 学級委員が「私たちの学級は、あの競い合いの取組を通して、・・・ができる学級になりました」と、学級内、学級外で話す機会を伺います。



ここまでが、競い合いの仕掛けです。
担任は、これを日常につなげていきます。そのつなぎ方はまた次の機会に紹介します。
まとめ:競い合いを仕掛ける際は、心の成長を軸にアプローチしよう
担任として目指すものは…『生徒たちの成長』です。
『勝ち』ではありません。『生徒たちの(その競技や合唱の)成長』でもありません。
競い合いなので、生徒たちが勝ちを目指すように、担任の先生は仕掛けていきます。
その中で担任の先生は、勝ちや負けの向こう側にある『生徒たちの心の成長』を目指します。
すると、学級が変わってきます。温かくなります。
ぜひ試してみて下さい。
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