子ども同士が認め合う学級づくり

鵜飼を知っていますか。

一人の鵜匠が、何羽もの鵜の特徴や状態を把握し、それぞれにつながった縄を巧みに操ります。

学級経営にも、これに似た形があります。

一人ひとりのことをよく知っている。
声を掛ける。
頑張りを見つける。
ほめる。認める。励ます。

どれも、担任として大切な仕事です。

でも、それを学級経営のゴールにしてはいけません。

担任一人と、35本の縄でつながっているような学級。

担任が一人ひとりを見て、
担任が価値を見つけ、担任が認める。

それだけで学級が成り立っているなら、組織の中心にいるのは担任です。

つくるべきなのは、子どもが子どもを見て、互いに認め合い、支え合える学級です。

目次

学級経営では、子ども同士の関係まで考える

子どもたちは、これから先、さまざまな人と出会い、さまざまな組織の中で生きていきます。

いつも自分を見て、認め、ほめてくれる一人の人がいるわけではありません。

先生、上司、先輩など、特定の一人から認められることばかりを気にするより、仲間のよさに気付き、自分も仲間から認められ、互いに支え合える関係の中で生きられる方がいい。

だから、教師との関係だけをよくする学級経営では足りません。

692人の子どもを追跡した研究でも、先生との関係と仲間との関係は、どちらもいじめ被害と関係していました。

先生との関係がよいほど、いじめ被害は少ない傾向がありました。

一方で、仲間から拒まれていることは、それとは別にいじめ被害につながっていました。

つまり、

「先生との関係がいいから、仲間との関係も大丈夫」とは言えないのです。

先生と子どもの関係をよくすることは大切です。

その上で、子ども同士の関係までつくっていく。

そこまで考えて学級を組織する必要があります。

子どもが子どもを見るように仕掛ける

例えば、休んでいる友達のプリントを整理している子がいたとします。

その場で、

「○○さん、ありがとう。優しいね」

と教師がほめる。

それでもいい。

でも、すぐ本人に伝えず、別の子にこんな話をすることもできます。

「今日、○○さんが△△さんのプリントを整理してくれてたんだよ。△△さん、学校に来たとき嬉しいだろうね」

それだけです。

すると、その話が子ども同士の中を動き始めます。

「○○、先生がこんなこと言ってたよ」

「お前、あれやってくれたんだな」

教師が見つけたよさを、教師だけが本人に伝えて終わらせない。

子どもが仲間の行動に気付くきっかけをつくる。

そのための仕掛けです。

ウィンザー効果を学級づくりに使う

第三者を通して評価が伝わることで、本人から直接伝えられるときとは受け止め方が変わることがあります。

こうした考え方は、日本では一般に「ウィンザー効果」と呼ばれています。

例えば、

「あなたのあの行動、よかったよ」

と教師が直接伝えるだけでなく、

「△△さんが、あなたのあの一言に助けられたって言ってたよ」

と伝える。

ここでの狙いは、教師のほめ言葉を遠回りさせることではありません。

子どもが子どもを認める関係をつくることです。

ウィンザー効果は、そのきっかけをつくる仕掛けとして使えます。

「誰のどんな姿がよかった?」と聞く

話し合いや活動が終わった後、学級委員や子どもたちに聞きます。

「今日、誰のどんな姿がよかった?」

「Aさん。こんなことを言っていたから」

「B君が、困っている人を助けていた」

「Cさんのあの一言で話し合いが進んだ」

教師が評価を発表するのではありません。

子どもが仲間を見て、よかった姿を言葉にする。

毎日、全員のよいところを書かせるような「ほめ合い活動」にする必要もありません。

実際の活動の中で、子ども自身が気付いた仲間の姿を取り上げればいいのです。

2024年には、子ども同士が具体的な行動をほめる「peer praise」に関する36本の研究をまとめたレビューも発表されています。

子ども同士が互いの行動を見て、肯定的な言葉を伝える実践についても、研究が積み重ねられています。

子ども同士が認め合う学級へ

教師がすべての子どものよさを発見し、教師がほめる。

それだけの学級をつくってはいけません。

教師は、子どもが仲間を見るように仕掛ける。

「あの子の、あの行動はいいな」

「あのとき助けてもらった」

「あの一言でみんなが動いた」

そうしたことを、子ども自身が見つける。

そして、それが子ども同士の間で伝わっていく。

担任一人と35人の子どもが、それぞれ縄でつながる学級ではなく、子ども同士の間に、たくさんのつながりが生まれる学級をつくる。

教師は、そのつながりが生まれるように仕掛け、必要なところを支える。

担任が価値を見つけ、担任が認める学級から、子どもが子どものよさに気付き、互いに認め合える学級へ。

そんな組織をつくることが、学級経営です。

参考文献

Demol, K., Leflot, G., Verschueren, K., & Colpin, H.(2020)“Revealing the Transactional Associations among Teacher-Child Relationships, Peer Rejection and Peer Victimization in Early Adolescence.” Journal of Youth and Adolescence, 49, 2311–2326.

Royer, D. J., & Ennis, R. P.(2024)“Student-delivered behavior-specific praise: a systematic literature review and meta-analysis.” Frontiers in Education, 9.

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